元素起源の新たな計算
イギリス・ハートフォードシャー大学のチアキ・コバヤシ博士率いる女性宇宙物理学研究者による国際研究チームは、この種の研究としては初めて、既存の観測データを分析し、周期表すべての元素の起源調査を行いました。
例えば炭素の生成は、半分は重い星の超新星で生成されますが、残りの半分は瀕死の低質量星で生成されます。また鉄は半分近くが大質量星の超新星爆発で生成されますが、もう半分は白色矮星が起こすⅠa型超新星によって生成されます。
そして、この研究で明らかになったのが、中性子星の衝突による重元素生成は思ったより少ないということでした。
研究チームの1人、モナッシュ大学の宇宙物理学者アマンダ・カラカシュ博士は、「もっとも楽観的な中性子星の衝突頻度の推定値でも、宇宙に存在する金などの元素量を説明するにはまるで足りませんでした」と述べています。
では、重元素はどこで生まれているのでしょうか?
研究チームによると、これは磁気回転超新星爆発というタイプの超新星が原因ではないかといいます。
磁気回転超新星爆発とは、磁場の強い大質量の高速回転する星が起こす超新星爆発のことです。
これはr過程を起こすのに十分なエネルギーを持っていると考えられ、太陽質量の25~50倍の恒星の超新星のごく一部が磁化していれば、中性子星の衝突で不足した分を埋められるかもしれないのです。
ほとんどの重元素の真の供給源が強い磁場を持つ回転する超新星だったというのは、驚きの発見でしたとカラカシュ博士はいいます。
また、研究チームは太陽質量の8倍より軽い星でも、重元素の約半分が生成されていることを発見しました。
瀕死の低質量星ではs過程と呼ばれる中性子捕獲プロセスが働いていますが、これも残りの元素のほとんどを生成しているというのです。
s過程とr過程の違いは、発生する時間スケールが大きく異なる点です。r過程はほんの数秒の間に起きる現象ですが、s過程は数千年という時間をかけて起こる現象です。