中性子星を中心にした二重連星系の不思議なX線
「重力赤方偏移」について、これまで科学者たちは太陽系内なら明確に確認してきました。
けれど遠く離れた宇宙から、その影響を観測することは困難でした。
NASAのチャンドラX線観測衛星は、そんな一般相対性理論の効果をはるか遠く、2万9千光年離れた星系から捉えることに成功したのです。
それは「4U 1916-053」と呼ばれる中性子星を主星として、その周りを恒星が回る2重連星系です。
4U 1916-053の伴星は中性子星に外層を剥ぎ取られてしまい、太陽よりもはるかに高密度な星のコアだけになってしまっています。
そしてこの2つの星は、地球と月の距離とほぼ同等の34万6千キロメートルしか離れていません。
高密度の強い重力を持った2つの天体が地球と月ほどの距離で回りあっているので、その公転周期も凄まじく高速です。
月は地球の周りを一周するのに1カ月を費やしますが、この伴星が中性子星を一周する時間はわずか50分です。
そして研究チームは、チャンドラが観測したこの連星系のX線スペクトルから、ちょっと変わった特徴を検出したのです。それこそがGPSにも影響している効果、重力赤方偏移の証拠でした。