日常生活にも影響するアインシュタインの「一般相対性理論」
アイザック・ニュートンは、地球の引力の存在に気づき、その力を計算する「万有引力の法則」を発見しました。
しかし、質量の大きい物体が生み出す重力という力が一体何なのかは、ニュートンにも、その後の多くの学者たちにもわかりませんでした。
アインシュタインの一般相対性理論は、そんな謎の「重力」を、時空間の歪みとして説明することに成功したのです。
そして、この理論に従うと、重力の強い場所では時間の流れは遅くなるということになります(一般相対性理論がなんなのかよくわからん、という人はこちらの記事を参照してください)。
私たちは重力の影響で地球の上に立っていますが、軌道上の宇宙ステーションへ行くとほぼ無重力に近い環境に変わります。地球の重力は地表に近いほど強くて、地表から遠ざかるほど弱くなっていくのです。
時空の歪みである重力の影響が変わるということは、地球では地上と上空で、時間の流れる速さが変わってしまうことを意味します。
以前、東京大学の研究チームが100億年使っても1秒もズレが起きないという超高精度時計『光格子時計』を使って、スカイツリーの地上階と展望台の時間の流れを測定しました。すると10億分の4秒、展望台の方が速く時間が流れていると明らかになったのです。
厳密に測定すると、一般相対性理論の効果によってスカイツリーの展望台くらいの高さでも時間の流れのズレが測定できてしまうのです。
こうした重力の影響により時間の流れが遅くなる現象は「重力赤方偏移」と呼ばれています。
「重力赤方偏移」は私たちの生活には直接影響はなさそうですが、実は日常的に利用しているGPSの位置情報の計算に影響しています。
GPSは地球を囲むように軌道上を回るGPS衛星の信号を元に、地球上での自分の位置を計算するシステムです。
軌道上のGPS衛星と地上の私たちでは、重力の影響でスカイツリー以上に時間の流れがズレています。そのため、位置情報の計算は一般相対性理論を元に時間のズレを補正しなければ正常に機能しません。
一般相対性理論がないと、私たちはスマートフォンやカーナビで自分の位置を正確に知ることができなくなってしまうのです。