ストレスホルモンの増加と、主観評価の謎の乖離
この実験では、見ての通り条件2のストレスグループが仕事を頻繁に中断されるなど多くのストレスを受けるように設計されています。
条件2のような状況は、実際職場で経験している人も多いかもしれません。
こうして異なる条件でストレスを与えた被験者に対して、実験では模擬的な休憩時間を20分おきに設け、その時間を利用して被験者に感じたことのアンケートと、唾液のサンプルの採取を行い、また心電図装置を常時装着してもらって心拍数のモニターを行いました。
唾液を取るのはそこからストレスホルモンの放出量が測定できるためです。
結果は明白で、評価面談を受けた2つのストレスグループは心拍数の上昇が確認され、唾液中のストレスホルモン「コルチゾール」も増加していました。
また条件2のグループは、条件1のグループよりコルチゾールの量が2倍近く高く検出されました。これは実験の設計に対して予想通りの結果だと言えます。
しかし、研究チームにとって予想外だったのがアンケートの結果です。
興味深いことに、仕事を頻繁に中断されていた条件2のグループは、ストレスホルモンの増加が示されていたにもかかわらず、アンケートでは「あまりストレスは感じなかった」と回答したのです。
これはストレスに対する心理的反応と身体的反応の矛盾を示すものです。
もっとも苦労したように見える条件2のストレスグループは、実際には条件1のグループよりも主観的にはストレスを感じず、いい気分で作業ができたと報告されているのです。