小惑星「101429」は月から来たのか?
この珍しい組成をした小惑星「101429」は一体どのようにして火星トロヤ群へやってきたのでしょうか?
1つの可能性として考えられるのは、この「101429」が通常のよくあるコンドライト隕石であり、それが太陽放射への長い暴露の中で月とよく似た組成に変化したというものです。
宇宙風化のプロセスが月と似たように進んだ場合、両者はそっくりになる可能性が考えられます。
しかし、もう1つの可能性としては、小惑星「101429」が衝突などによって分かたれた月の双子の兄弟であるということです。
初期の太陽系には今よりも多くの瓦礫にあふれていて、天体同士の衝突は日常茶飯事でした。そうした中で大きな小惑星(微惑星)が月に衝突し、破片が飛ばされて火星軌道まで到達し、そのまま火星のトロヤ群に閉じ込められたのかもしれないのです。
ただ、もっとも可能性の高いシナリオはこの小惑星が火星から来たというものです。
101429のスペクトルは、惑星サイズの物体の外層や地殻に見られる鉱物が豊富であり、火星には自身とほぼ同サイズの天体が衝突したボレリアス盆地のような痕跡も残っています。これほど巨大な衝突ならば、火星トロヤ群に「101429」を送り出すことは簡単だったでしょう。
もっと詳細に分析してみなければ、この小惑星の親がなんであったのか明確にすることは難しいでしょう。しかし、研究者たちは、単純にこれが月の兄弟と考えることには消極的なようです。
大昔に月と分かたれた兄弟が火星のそばにいる、というのはなんだかロマンを感じるお話ですが、実際はどうなのでしょうか?
トロヤ群の小惑星の研究については、今後探査機を送り込んでより詳細な調査を行う計画も進められています。今後、その真実が明らかになるときが来るかもしれません。