陸上生物の起源は「海」にあり
ブルース氏は、ハネの起源の解明にこれほどの年月がかかった理由について、「甲殻類が昆虫の祖先である証拠が見つかったのはつい最近のことだから」と述べます。
遺伝子分析技術の発達にともない、甲殻類が昆虫の祖先と遺伝的に断定されたのは2010年のことです。
それまでは、形態学にもとづいて、ムカデやヤスデといった多足類が昆虫の祖先と考えられていました。いくら多足類を調べたところで、ハネの起源は見付かりっこないのです。
そのせいで、「ハネは昆虫が登場してから新たに生まれた器官であり、祖先から譲り受けたものではない」とする説も主張されるようになりました。
昆虫の真の祖先とは別の場所を探していたので仕方ありません。
しかし、今回の研究により、ついにハネの真実が明らかにされました。
ブルース氏は「約3億年前に上陸した甲殻類が、おそらく陸上での体重を支えるために、脚の一部を体壁に組み込むようになったのでしょう。
それが昆虫において、背中の上部に移動し、ハネへと進化したのです」と結論付けました。
このように、あらゆる陸上生物は海に起源を持ちます。
私たちヒトが持つ器官の多くも、元をたどれば太古の魚類から始まっているのです。