甲殻類の脚が「ハネ」へと進化していた
研究チームは、ハネの進化の起源を解明するべく、ミナミモクズ属(Parhyale)という甲殻類と、甲虫・ショウジョウバエの脚を遺伝的に分析しました。
両者の脚はいくつかのパーツに分節化されており、前者は7つの節、後者は6つの節からなります。
分析の結果、両者の脚の遺伝子は、足先から1〜6番目の分節までピッタリ対応していることがわかりました。
他方で、祖先となる甲殻類の脚は、昆虫のそれより節が2つ多いことも判明しています。
昆虫はこの2つの節をどこにやったのでしょうか。
研究主任のヘザー・ブルース氏が過去の文献に当たってみたところ、1893年の論文から「昆虫は胴に近い7番目の節を体壁に取り込んだ」という理論を見つけました。
さらに、1980年代の論文から「昆虫は脚の近部位(7節目)を体壁に組み込むだけでなく、祖先の甲殻類が持っていた脚の基部(8節目)を背中側に移動させ、ハネを進化させた」という理論が発見されました。
この8節目は、祖先の甲殻類では脚の一部になっており、ミナミモクズ属では体壁に取り込まれ、昆虫ではハネを進化させる土台になっていたのです(上図)。
ブルース氏は「私たちの遺伝子分析は、これら2つの理論を裏付けるもの」と話します。