ナノレベルでの物性変化

通常、ダイヤモンドは砕けません。
しかし近年の微細加工技術の進歩により、ナノレベルの世界では、私たちが常識として考えている数々の物の性質が、違ってくることが明らかになってきました。
そこで研究者たちは、最も硬いとされているダイヤモンドの性質もナノレベルで調べることにしました。
具体的には、ダイヤを長さ1000nm(ナノメートル、1メートルの10億分の1の長さ)、幅300nmのナノサイズの棒に加工して、両側を掴んで引っ張ってみたのです。
もしダイヤモンドの性質がナノレベルの世界でも不変ならば、ダイヤモンドは延びたり曲がったりしないはずです。
しかし結果は意外なものになりました。
ダイヤモンドは砕けないがよく延びる

研究者たちがナノサイズまで加工されたダイヤの棒はを引っ張ったところ、興味深い変化があらわれました。
ダイヤの棒が7.5%もの分子的に均一な「延び」をみせたのです。
また棒の長さを1000nmのまま、幅を100nmまで細くすると、均一な延び率は1割(9.7%)にまで達することが判明します。
さらに加えていた力を解除すると、延びも解消され、ダイヤの棒は元の長さに戻りました。
この事実は、ナノレベルの世界においては、ダイヤはゴム板のように延び縮みすることを示します。
私たちがダイヤモンドに抱いていた「硬さ」のイメージは、ナノ世界では幻想に過ぎなかったようです。
ですが、真に興味深い点はダイヤモンドのゴム化ではありませんでした。
ダイヤは延びることで、極めて特殊な半導体になる道が開けたのです。
ダイヤは延ばすと電気が通りやすくなる

ダイヤは通常、電気を通さない絶縁体です。
しかし、ダイヤを引き延ばすと様子がかわってきます。
引き延ばされたダイヤの電気の通りやすさを計算すると、絶縁性が大きく低下して、電気がより通りやすい半導体化していることが示されました。
この事実は、ダイヤモンドが物理的な力で電気の通りやすさを変えられる素材であることを意味します。
さらに重要なことに、伝導性の変更は、加える力と連動した連続的かつ可逆的なものでした。
つまりダイヤを半導体材料として使うことで、物理的な力を利用して電気の流れる量を調節できる、全く新概念の電子部品を作ることを可能になるのです。
ダイヤでシリコンよりも1340倍優れた半導体を作れる

今回の研究で、ダイヤモンドを半導体の材料とする道が開けました。
ダイヤモンドには優れた放熱性があり、既存のシリコンよりも高い電圧に耐えることできます。
高い電圧と熱に耐えられれば、そのぶん多くのエネルギーを計算に投じられ、優れた性能(シリコンの1340倍)を発揮する電子部品の制作が可能になります。
さらに延びによる電気伝導性の変化は、より動的な性能をもつ回路を可能にするでしょう。
もしかしたら未来の世界の電子機器は、ダイヤ製の半導体と、それらを延び縮みさせるレトロパンクな歯車やネジを組み合わせた機械機構で作られているかもしれませんね。















