フンコロガシは「天の川」さえも目印にできる
2003年の研究によると、夜行性のフンコロガシは「月の光」を目印にしていることが明らかになりました。
自然光はふつう、上下左右のランダム方向に散乱しますが、大気中の微粒子に当たることで偏光(光の振動が規則的になる)します。
フンコロガシは、その月の偏光を頼りにしていたのです。
以前、ミツバチやアリが太陽の偏光をもとに移動することが知られていましたが、太陽光より100万倍も弱い月の偏光を目印にできるのは、あらゆる動物の中でフンコロガシのみです。
しかし、月の見えない夜だってあります。太陽も風も月も使えない場合、フンコロガシはどうするのでしょうか。
その答えは、2013年に解明されました。
なんとフンコロガシは、夜空を横切る「天の川」を目印にすることもできたのです。
プラネタリウムを使った実験では、天の川の向きでフンコロガシの進行ルートをコントロールできることが判明しました。
彼らの視力は弱く、星の一つ一つは見えませんが、明るく広がる天の川の帯はその目で捉えていたのです。
ところが、天の川でさえ目印にできるフンコロガシは、地上の目印(土の壁や木、岩など)にはまったく反応しません。
実験ケースの中に、人目にはわかりやすい石の目印を置いても、自然光や風、天の川がなければ、完全に道を見失うのです。
専門家は「フンコロガシが長期的な巣を持たず、一時的にしか存在しない動物のフンの山から山を行き来する流浪の生活を送っているので、風景を記憶する意味があまりないからかもしれない」と指摘します。
フンコロガシの能力については、まだまだ謎がつきません。