直線ルートを進めるのは「太陽と風」を目印にしていたから
フンコロガシは現在、世界に8000種以上が知られており、団子状のフンを転がすのは600種ほどです。
フンの山から団子を作り出し、平均して約6分運んだのち、それを地下に埋めます。
団子は自らの食料やパートナーへの贈りもの、卵を産んで子どものゆりかごにしたりします。
一方で、運搬中はライバルに横取りされる危険性があるため、できるだけハイスピードかつ、最短の直線ルートをたどるように進化してきました。
その時に目印にされるのが「太陽の動き」です。
フンコロガシが太陽の移動ルートを反映して東から西に走ることは、古代エジプトの頃から知られていました。
しかし、それが実験で確認されたのは2003年になってからです。
小さな実験アリーナに数種のフンコロガシを置いたところ、すべてが太陽のある方向に向かってほぼ直線に移動しました。
ですが、フンコロガシに太陽が見えないようカバーをしたところ、ルートはまったくグチャグチャになってしまったのです。
では、太陽が天頂に達する正午(日の出と日の入りの間)では、どうやって東と西を見分けるのでしょう。
2019年の研究によると、フンコロガシは太陽を目印にできないときには「風」を頼りにすることが判明しています。
とくに大事なのは、フンを運ぶ6分の間、風がずっと同じ方向に吹くことでした。
この戦略は、フンコロガシがよく生息する砂漠などで有効です。
砂漠では、朝焼けの日射しで空気が温まって上昇し、正午頃に最も強い風が吹きます。
フンコロガシは太陽が目印として使えないとき、その風向きに沿ってルートを決定していたのです。
それなら、太陽も風も使えない場合、フンコロガシは何を頼りにしているのでしょうか。