夢で走ってもベッドの上では不動なのはどうして?
夢の中で私たちは走り、飲み、食べ、パンチやキックをくり出し、たまに空を飛びます。
しかし夢の中での行動は、現実の体には反映されません。
一方で、私たちは眠ったまま体が動くという様々な事例を知っています。
近年の研究により、この睡眠時の勝手な体の動きには種類があるとわかってきました。
よく知られている「夢遊病」は、覚醒度が低く深い眠りにあるとき(ノンレム睡眠)に体が動き回ってしまう現象です。
一方で、覚醒度が高い状態(レム睡眠)の動きは、レム睡眠行動障害と言われています。
この2つの決定的な違いは、夢をみているかどうかです。
夢遊病は覚醒度が低いため意識は夢をみていない一方で、レム睡眠時行動障害では、意識は夢を体験しているのです。
意識もなく夢も見ていないにもかかわらず体が動き回ってしまう夢遊病は非常に不気味と言えるでしょう。
しかしながら、危険度ではレム睡眠時行動障害も劣りません。
レム睡眠時行動障害では夢の中の意識と現実の体の動きがつながってしまっています。
そのため夢で走ればベッドの上でも激しく足が動き、パンチをすればふとんから拳が突き出ます。
結果、一緒に寝ている人を傷つけてしまう例も報告されています。
このように「意識・夢・体」にかかわる現象は非常に謎が多く、多くの研究者の興味を引き付けてきました。
ですが残念ながら、現代においても解明には至っていません。
しかし今回、日本の筑波大学の研究者たちによって、レム睡眠時の異常行動にかかわる新たな神経回路が、マウスの延髄(延髄腹内側:VMM)で発見され「意識・夢・体」の関係を説明する、統一理論が示されました。
結果、私たちの体には、自然なVR世界である夢を安全に体験するために、延髄に体の動きを抑制する安全装置が組み込まれていることが判明します。
安全装置は「意識・夢・体」をどのようにつなげ、そして分断していたのでしょうか?