磁石のような「同極反発」を利用!今までにない毒耐性
コブラのような毒ヘビの標的になる生物は、神経受容体が強力な「負の電荷」をおびています。
反対に、ヘビの神経毒は、強力な「正の電荷」をおびるよう進化してきました。
生物の神経は通常時、アセチルコリンという神経伝達物質を放ち、それが筋肉の収縮を促します。
しかし、ヘビの神経毒は、アセチルコリンが神経受容体に結合するのを妨害することで、筋肉の麻痺症状などを引き起こさせます。
この妨害プロセスは、正電荷をもつ神経毒が負電荷をもつ受容体にくっつくことが原因でした。
ところが今回の研究で、一部のヘビが、神経受容体にある負電荷のアミノ酸を正電荷のリシンに置き換えていたことが判明したのです。
これはつまり、神経毒と受容体がともに正電荷になるので、毒がはじかれて妨害できなくなることを意味します。
フライ氏は「これまでは、マングースのように神経受容体に枝のような突起物構造をもつことで、毒を”物理的に”遮断する防御法は知られていました。
しかし、磁石のような同極同士の反発を利用しているものは初めてであり、このような遺伝的進化は現在まで完全に見過ごされていました」と話します。
本研究では、東南アジアに分布する「ビルマニシキヘビ」および、南アフリカに分布する「モール・スネイク」に神経毒耐性が見つかりました。
両者ともに猛毒をもつコブラが天敵として身近に生息しています。
反対に、木の穴の中に身を隠せる「アジアニシキヘビ」や、周囲に天敵の毒ヘビがいない「オーストラリア・ニシキヘビ」には、毒耐性が見られませんでした。
やはり、身の周りに天敵がいるかいないかで毒耐性の遺伝的変異が起きているようです。