原因不明の要因は論理パズルの落とし穴だった
通常、病気の原因は限られています。
複数ある場合でも、互いに矛盾しないことが求められます。
例えば酷い下痢になったとき。
原因1が「牛乳を飲んだせい」で原因2が「牛乳を飲まなかったせい」
であってはダメです。
原因1と2が互いに互いを否定するからです。
そんなのは当たり前だと思われるかもしれませんが、まさにそこが落とし穴でした。
発見の契機となったのは、過敏性腸症候群を起こした患者から集められた大量の糞便でした。
研究者がこれら糞便を詳細に分析した結果、サルモネラ菌をはじめとした病原体が多数、確認されたのです。
ただ、やはり全てではありませんでした。
何人かの患者の糞便は非常にクリーンであり、病原体とは無縁だったのです。
糞便の含まれる菌の有無を病気の原因とするには、クリーンな糞便をもった患者の存在はあってはなりません。原因が否定されてしまいます。
しかしベルギーの腸神経免疫相互作用研究所のハビエル・アギレラ-リザラガ氏は、この単純な論理パズルこそが、原因不明とされている最大の要因であると考えました。
そして、2つを(病原体を含む糞便とクリーンな糞便)合わせて、どちらも原因として失わないで済む新しい仮説を考え付きました。