満月に起きる月表面の電場の嵐
月の表面は乾いた荒野のように見えます。
しかし、実際は、極地にあるクレーターの影に氷ができていたり、火山岩に結合していたり、月の土壌に錆びた鉄が混じっていたりと、予想よりはるかに多くの水の存在が確認されています。
昔は、地球をはじめ惑星などに水が存在する場合、星系の形成時にもたらされたものが、そのまま保持されているのだと考えられていました。
けれど、現在は水に関連する元素ははるかに動的に宇宙を動き回っていることがわかっていて、火星の表面にも木星の衛星にも土星の輪にも、当初想定されていたよりも、さまざまな場所で水が動き回っていることがわかっています。
特に月にある水などは太陽風が運んだものである可能性が高いと考えられています。
太陽風が吹き飛ばした正に帯電した水素イオンが、月面に衝突したとき、それがヒドロキシル基(OH)や水分子(H2O)を生成したというのです。
しかし、このモデルをシミュレーションすると、月に生成された水の多くは地球の磁気圏を月が通過する際に吹き飛ばされて消失してしまうという結果が示されていました。
地球には磁気圏が存在し、これが太陽風による激しい荷電粒子の流れから地球を守っています。
この磁気圏は太陽風に吹かれて太陽と反対側の地球の後ろに、長い尾のように伸びています。
そして、この部分には磁場が弱く、代わりに高温・高密度のプラズマが存在するプラズマシートと呼ばれる領域が形成されています。
太陽・地球・月の順に並ぶ満月の約3日間、月はこの磁気圏の尾に入り、プラズマシートも通過します。
月は自身を守る磁場を持っていないため、このプラズマシートを通過するとき、電子やイオンの嵐に表面がさらされ、水も吹き飛ばされてしまうと考えられるのです。
またこの期間に、月は太陽風による水の補充を受けられないため、失う量が多いだろうと推測されていたのです。
しかし、これは新しい月表面の水分布に関するデータと大きく矛盾しています。
なぜ、月の表面には多くの水が存在しているのでしょう?