フライパン上で起こる「マランゴニ対流」とは?
研究チームは、市販のテフロン加工フライパンに、ひまわり油を厚さ1.5 mmになるように引き、オーバーヘッドカメラで加熱時に起こる様子を撮影しました。
すると、厚みの均等なコーティングの中央に穴(ドライスポット)ができ、油がフライパンの外縁に向かって引き寄せられていきました。
対照的に、中央のドライスポットは徐々に大きくなっていきます。
食材がくっつくのは、このドライスポットです。
これは普段の調理でもよく見られますね。
研究主任のアレクサンダー・フェドルチェンコ氏は「物理学的に説明すると、これは熱毛管流(thermocapillary convection)という現象です」と話します。
熱毛管流は、フライパン上の不均一な加熱によって温度差が生じ、そのせいで油のコーティングに勾配ができる現象です。
具体的には、温度の高いところで油の表面張力が小さくなり、反対に温度の低いところで表面張力が大きくなります。
その結果、油表面の力の釣り合いによって高温から低温へ、つまりフライパンの中央から外側に移動する対流が生じるのです。
これを「マランゴニ効果(対流)」とも呼びます。
さらに、チームは、中央にできたドライスポットが、ある大きさを超えると修復しないことを発見しました。
この臨界サイズは、液体の温度によって変わりますが、原則として、液体の表面張力がフライパンの外縁に引っ張られることで崩れ、失われると達します。
臨界サイズを超えたドライスポットは急速に大きくなり、実験では、毎秒5.5cmのスピードで広がっていきました。
これを踏まえて、フェドルチェンコ氏は、食材がくっつかないようにする方法として、底の厚い鍋を使用することを提案します。
「鍋の底が厚ければ、加熱状態が均一になるので油の温度差が生まれにくくなる」と説明します。
また、油のコーティングを厚くしたり、定期的に食材をかき混ぜるというお馴染みの方法も効果的です。
同氏は「これと同じ現象は、食品や化学薬品の製造過程にも見られるため、産業面での応用も可能でしょう」と話しました。