人類の基本となる腸内細菌叢
腸内細菌叢は、私たちの健康や、成長にも関連していると言われており、生物の食性にも影響を与えているようです。
吸血フィンチや吸血コウモリなど、一部の吸血という特殊な食性を持つ生物は腸内細菌叢によって血液を栄養に変えているという研究報告もあります。
そのため腸内細菌の存在は、生物の進化にも結びつくもので、人間の健康にとって基本となるのはどの成分か理解することは非常に重要な意味を持っています。
特に現代の私たちは、清潔な環境や加工食品・薬物の影響によって、腸内細菌叢の多様性が減少傾向にあるといわれています。
この問題に対処するためにも、古代から私たちの中に残る、基本的な細菌の存在を知る必要があるのです。
腸内細菌叢の多様性の低下は、特に炎症性腸疾患、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、結腸直腸癌などの病気の増加と関連していると考えられています。
しかし、私たちにとって基本となる重要な細菌叢の成分はどうやって特定すればいいのでしょう?
そこで今回の研究チームが着目したのが、古代人の腸内に住んでいた微生物を調べることでした。
進化の歴史を通して、変わることのない腸内微生物の存在は、私たちにとって重要な存在と考えることができます。
チームは、多くのネアンデルタール人が住んでいたという、スペインのエルソルトから約5万年前の堆積糞便を収集し古代のDNAを抽出して分析をおこないました。
この堆積糞便は、これまで見つかった中でももっとも古いサンプルだといいます。
こうしてチームは、ネアンデルタール人の腸に生息していた微生物の組成を再構築することができたのです。
そして、このネアンデルタール人の微生物叢からは、現代の私たちと多くの類似点が見つかったといいます。