HAYSTAC実験のアーティストイメージ。マイクロ波空洞(金の円柱)がアクシオン(紫の粒子)と共振するよう周波数を調節している。これが電磁界(虹色の円)のノイズを絞ることで信号を強くし、検出速度を向上させる。
HAYSTAC実験のアーティストイメージ。マイクロ波空洞(金の円柱)がアクシオン(紫の粒子)と共振するよう周波数を調節している。これが電磁界(虹色の円)のノイズを絞ることで信号を強くし、検出速度を向上させる。 / Credit:Lehnert Group and Steven,Burrows,UC Berkeley
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暗黒物質候補である未知の素粒子「アクシオン」はどうやって探しているの? 検索速度を上げる新技術と共に解説 (2/3)

2021.02.12 Friday

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アクシオンの捜索はラジオのチューニングみたいなもの

アクシオン信号を検索するHAYSTAC検出器。
アクシオン信号を検索するHAYSTAC検出器。 / Credit:Kelly Backes, CC BY-ND

ある有望な理論によると、アクシオンは特定の周波数で見えない波の集合のように振る舞っていると説明しています。

チームが構築した検出器HAYSTACは、この波を拾う電波受信機のような装置です。

普段私たちが使う、ラジオや携帯電話は電波を音波に変換して機能しています。同じようにHAYSTACはアクシオンの波を電磁波に変換して受信することを目指しています。

問題は、未知の存在であるアクシオンの波が、一体どの周波数で振動しているのか誰も知らないということです。

これは知らない土地で、ラジオ局の電波を探しているのと似ています。

このとき、私たちはラジオのダイヤルをひねりながらラジオの聞こえる周波数を調節していきます。

アクシオンの探索は、ラジオ局を探すことに似ている。
アクシオンの探索は、ラジオ局を探すことに似ている。 / Credit:canva

ラジオのチューニングでは、次々と簡単に周波数を変更できるし、1つの周波数では数秒も停止させれば、そこが目的のラジオ局かどうか確認できます。

しかし、アクシオンのラジオ放送を探す場合、そう簡単には行きません。

アクシオンの信号は、ほとんどノイズと見分けられないほど微弱です。

そのため、ノイズが多ければその分、1つの周波数に長く留まって、信号があるのかどうかさまざまな調査をしなければならないのです。

そして何より問題なのが、FMラジオは、わずか88MHz~108MHz(1MHzは100万Hz)の帯域にしかありませんが、アクシオン周波数は300Hz~3000億Hzというとてつもなく広い帯域のどこかにあるということです。

現在のペースで捜索を続けていたら、アクシオンを発見するか、存在しないことを証明するために1万年以上かかる可能性があると研究者は語ります。

当然そんな気長な研究を続けるわけにはいきません。そこで重要となるのが、今回発表された検出速度をあげるための技術なのです。

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