長期麻酔は「愛する人」を変えてしまう
長期麻酔は「愛する人」を変えてしまう / Credit:Canva 
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長期麻酔は「脳の接続」を変え認知障害を引き起こす? 退院後に患者の家族が感じる違和感を明らかに (2/3)

2021.02.19 Friday

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40時間もの長期麻酔からみえてきた事実

麻酔がはじまるとシナプスが増えるが、麻酔後には大きく減ってしまう。麻酔後に減るのは麻酔を行うより前のシナプス。つまり麻酔前の記憶が失われる可能性がある
麻酔がはじまるとシナプスが増えるが、麻酔後には大きく減ってしまう。麻酔後に減るのは麻酔を行うより前のシナプス。つまり麻酔前の記憶が失われる可能性がある / Credit:PNAS

今回の研究では、マウスに対して最大40時間にもおよぶ長期麻酔がおこなわれました。

これは同条件における、これまでで最も長い麻酔実験が6時間であることを考えると、7倍近い記録となります。

結果、麻酔中では神経細胞の接続部(シナプス)の大幅な増加と減少の2つが同時進行していたことが判明します。

また興味深いことに、増減数を比較したところ、増加数は減少数を大幅に上回っていました。

この結果は、麻酔中の内では複雑さを増す方向への神経回路の再編成が起きていることを示します。

一方で、麻酔を終えた後では神経細胞の接続部(シナプス)の急激な喪失が起きていたことが判明します。

さらに喪失されたシナプスには奇妙なパターンがみられました。

長期麻酔中に増えたシナプスは安定的であった一方で、失われたシナプスは麻酔前に形成されたものだったのです。

この結果は、長期麻酔はマウスから麻酔前に獲得された接続(長期記憶など)を奪い、麻酔中に獲得した正体不明の接続を押し付けるはたらきがあることを示します。

研究者たちは、これら麻酔中の新規接続が意味のないランダムなものであった場合、既存の神経回路との間に不和が生じ、認知障害を引き起こす可能性があると言及しています。

次ページ麻酔が引き起こす認知障害をとめる有効手段は存在しない

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