長期麻酔は脳の接続を変化させる

医学において麻酔は命を救う重要な要素ですが、古くからその負の影響が報告されてきました。
特に長期麻酔においては顕著であり、退院後、多くの家族たちが「以前の入院患者と何かが変わってしまった」と報告しています。
報告を元に医師たちが調査を行うと、長期麻酔を経て退院した入院患者の多くが、記憶喪失や精神の混乱、うつ病など長期的な精神障害に苦しんでいたことが判明します。
しかし原因となる神経メカニズムは不明のままでした。
そのため本人や家族に向けた説明では、これらの症状が、病気の後遺症に加えて、医療行為の体への負担、環境変化、心的なストレスなどが主な原因(集中治療室症候群の一種である)とされてきました。
しかしドイツで神経科医としての勤務経験を持つ研究者、ヴェルセン氏は疑問を持ちました。
ヴェルセン氏は長期麻酔に関連する精神障害の背景には、脳細胞や神経回路へのもっと直接的な影響が潜んでいると考えていたからです。
ただ、生きている人間の頭蓋骨を削って、顕微鏡をあてるわけにはいきません。
そこでヴェルセン氏は代わりに、上の図のような「マウスの集中治療室」を作りました。
このミニチュアな集中治療室は、かなり本格的であり、麻酔装置だけでなく、水分と栄養補給のための点滴・心拍数と呼吸数の測定・酸素濃度の監視・体温維持装置、そして脳を覗き込む最新の2光子顕微鏡などを備えたものです。
この集中治療室に入室するのは、脳細胞の観察用に頭蓋骨に穴を開けられた健康なマウスです。
長期麻酔は脳細胞にどのような影響を与えていたのでしょうか?