火星は夏になると全長1800kmに達する不思議なのろし雲が現れる。そのメカニズムはずっと謎に包まれていた。
火星は夏になると全長1800kmに達する不思議なのろし雲が現れる。そのメカニズムはずっと謎に包まれていた。 / Credit:ESA/GCP/UPV/EHU Bilbao
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火星に繰り返し出現する「ふしぎな細長い雲」の発生メカニズムが明らかに! (2/2)

2021.03.12 Friday

前ページ夏だけ現れる細長い火星の雲

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火星ウェブカメラを使って、今まで見えなかった場所を観測した

火星の軌道上を回る火星探査機「マーズ・エクスプレス」
火星の軌道上を回る火星探査機「マーズ・エクスプレス」 / Credit:NASA/JPL/Corby Waste

マーズ・エクスプレスにはVMC (Visual Monitoring Camera)という小型カメラが搭載されています。

VMCはもともとはマーズ・エクスプレスから「ビーグル2号」という着陸船を切り離した際に、それを確認するために設置されていたもので、2003年当時のパソコンウェブカメラと同程度の解像度しか持っていません。

そのため、役目を終えた後、VMCは基本的に電源が切られていました。

最近は火星ウェブカメラとして学校や天文クラブなどを対象に、火星を自由に撮影できるなら何をするか? というアイデア企画で利用されたりしましたが、科学研究でVMCは特に利用されてはいませんでした。

しかし、このVMCは解像度は低いですが、視野が広く謎のAMECの時間的な変化を追い続けるのにちょうどよかったのです。

このことに気づいた今回の研究者、スペイン・バスク大学のヘルナンデス・ベルナル氏は、VMCを使ってAMECの長期研究を行ったのです。

VMCで撮影されたアレシア山の細長い雲。夜明けから雲が発達する様子が映されている。
VMCで撮影されたアレシア山の細長い雲。夜明けから雲が発達する様子が映されている。 / Credit:ESA/GCP/UPV/EHU Bilbao , CC BY-SA 3.0 IGO

研究では2018年10月から繰り返し発生する雲を観測しました。

このGIF画像の左側の黒い領域は、火星の夜側です。青い線が夜と昼の境界を示します。

画像からは、AMECが日の出前のアルシア火山西斜面から成長を始めて、その後2時間半に渡り西へ向かって広がっていく様子がわかります。

このとき雲は、高度45キロメートルで時速600キロを超える非常に速い速度で成長を続けています。

太陽が昇るにつれて、気温は上昇し、雲は膨張を停止して午後にかけて、高高度の風によって西へ引き伸ばされていきます。

また研究チームは、他にも火星で稼働している数々の探査機のデータについても再検証していきました。

特に驚いたのは、1970年代に撮影されたバイキング2号の観測において、すでにAMECは部分的に画像化されていたことです。

多くのミッションによる観測が、火星のこの奇妙な雲を研究する助けとなった。
多くのミッションによる観測が、火星のこの奇妙な雲を研究する助けとなった。 / Credit:ESA

こうした研究の成果によって、AMECが最大で長さが1800キロメートル、幅は150キロメートルに及ぶことがわかりました。

これは火星で見つかる地形性の雲としては最大のものです。

地形性の雲は、惑星表面の地形的特徴(山や火山など)によって、風が強制的に上に向けられた結果として形成される雲のことで、地球でも見つけることができます。

しかし、地球に見られる地形性の雲は、こんな巨大な長さに達することはなく、このように鮮やかな挙動は見せません。

これはマーズ・エクスプレスのVMCをうまく利用した成果であり、地球と火星の気候システムの違いを理解するために重要な知見になると考えられます。

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