夏だけ現れる細長い火星の雲
火星では、夏至の時期になると地球からも望遠鏡で見えるくらい巨大な細長い雲が現れます。
この雲は、標高20キロメートルの休火山「アルシア山」近くから出現していて、非常に長い距離を急速に細長く成長した後、数時間ほどで消えてしまいます。
火山近くに現れることから、最初は火山活動によるものかと疑われましたが、現在は火山活動とは直接関係しない水氷の雲であることがわかっています。
アルシア山付近から発生するため、「AMEC(Arsia Mons Elongated Cloud:アルシア山狭長雲)」と名付けられたこの雲は、数時間で消えますが火星の夏になると80日間にわたって繰り返し出現します。
AMECはアレシア山の南西側面に沿って形成されていて、2009年、2012年、2015年と火星の夏になると毎年見ることができます。
火星は地球より太陽から遠い軌道を回っているため、1年が地球の倍の687日にあります。そのため、火星で毎年発生するイベントは、地球からは隔年で観測される状況になります。
このAMECは、火星の夜明け頃から形成され午後に差し掛かる頃に消えてしまいます。
このことはAMECの研究を困難にする要因となっていました。
火星探査機の多くは、カメラの視野の狭さや回っている軌道の関係で、午後にならないとこの雲が観測できません。
そのため、AMECの発生から消えるまでの全体像を見ることが難しかったのです。
そこで今回の研究チームは、火星探査機マーズ・エクスプレスの通常の研究では使われていないあるカメラを利用することを思いついたのです。