3種の異なる涙を流させる
私たちのの目に存在する涙腺は3種類の涙を流すことができます。
1つ目は、目を乾燥から保護するために潤いを与えるための涙。
2つ目は、物理的な接触刺激に反応して目を損傷から保護するために流される涙。
3つ目は、脳からの神経伝達物質によって引き起こされる、感情に起因する涙です。
そこで研究者たちは涙腺オルガノイドも3種の涙を流せるかどうかを確かめました。
1つ目の涙の確認はすぐにできました。
涙腺オルガノイドが入れられた培養皿は、常に分泌される「1つ目の涙」で濡れていたからです。
また「2つ目の涙」も、物理的な刺激を与えることで流させることに成功します。
ただ感情に起因する「3つ目の涙」を流させるには工夫が必要でした。
涙腺オルガノイドは脳と結合していないため、脳から泣くための信号を受け取れないからです。
そこで研究者たちは、人間が感情に起因する涙を流すときに、脳から涙腺に供給される神経伝達物質「ノルアドレナリン」を加えました。
もし涙腺オルガノイドに感情に反応して泣く能力があれば、ノルアドレナリンを加えることで涙を分泌するはずです。
実験を行った結果、涙腺オルガノイドはノルアドレナリンに反応して感情に起因する3つ目の涙を流したのです。
これらの結果は、培養された涙腺オルガノイドは涙腺のもつ3つの役割を正確に再現していることを示します。
また興味深いことに、原因の異なる涙は、成分が微妙に異なることが発見されました。
涙の成分の調整は、涙腺にある複数の分泌器官が異なる成分の涙を作り、原因に合わせて合成されることで作られます。
研究者たちは涙腺オルガノイドの性能に検証したあと、次に移植実験にとりかかりました。