投手の肩を痛めずに「魔球」を開発する
今回の研究により、フォークボールの謎が解明されました。
野球ボールの縫い目のわずかな起伏が空気の流れをかき乱し、上がるはずのバックスピン弾を逆に大きく引き下げていたのです。
これまで数々の分析が野球のボールに対して行われてきましたが、縫い目の細かな起伏までシミュレーションに含まれたのは、今回の研究がはじめてになります。
また今回の研究成果を福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大投手のフォークボールに適応した結果も興味深いものになりました。
千賀滉大投手の投げるフォークボールは落差が非常に大きいことで知られています。
シミュレーションを行った結果、千賀滉大投手が投げるフォークボール(通称:お化けフォーク)は、バックスピンだけで説明できる範囲を超えていました。
そこで研究者たちは上の図のように、バックスピンとは異なるジャイロ回転(ドリル型の回転)を元にしたシミュレーションもおこない、落差を再現することに成功します。
この結果は、開発されたシミュレーションが様々なボールの挙動を正確に再現できることを示します。
今回の研究成果を他の投げ方の分析に使用することで、投手の肩を痛めずに無限の試行を繰り返すことが可能になり、新たな魔球の開発・発見につながると期待されます。
もしかしたら将来の野球は、コンピュータやAIが算出した数々の魔球で、よりスリリングなものになっているかもしれません。