長寿遺伝子はDNAのエラーを少なくしエネルギー生産効率を減らす
なぜ超長寿の人々の遺伝子は、若い人よりもエラーが少ないのか?
答えを得るために、研究者たちは超長寿の人々の全ゲノムを徹底的に調べることにしました。
これまで超長寿な人々に対してさまざまな遺伝解析が行われてきましたが、全ゲノムに対する詳細な分析が行われたのは今回の研究がはじめてになります。
結果、これらの超長寿な人々は通常の人々には存在しない5つの遺伝子変異が存在しており、3つの遺伝子のはたらきを変えていることが示されました。
これら3つの遺伝子のうち2つは、DNAの損傷に対して細胞を敏感にしたり、DNA損傷を引き起こす活性酸素を調節したり、危険な変異を起こした細胞ががん化する前に自殺させるといった、老化に直接的にかかわる機能を持っています。
研究者たちは、長寿な人々は、これらの2つの遺伝子に「幸運な変異」が起きており、DNAを守る、上記の能力がブーストされているのだと考えました。
また残りの1つの遺伝子は、細胞のエネルギー生産工場であるミトコンドリアの円滑な機能にかかわっていました。
ただ、超長寿な人々はエネルギー生産能力がブーストされているわけではないかもしれません。
むしろその逆で、超長寿の人々では変異の結果、ミトコンドリアのエネルギー生産効率が若干、落ちている可能性があるのです。
飽食の時代である現代では、エネルギーの取り過ぎにより糖尿病などの多くの病気を引き起こしてしまいますが、摂取したカロリーをエネルギーに変換する際にハンデがあれば、カロリーを取り過ぎても健康な体を維持しやすくなります。
また別の研究でも、超長寿が先天的な遺伝子のお陰であるという研究結果が出ています。
105歳以上の兄弟を持つ人が、そうでない人に比べて105歳に達する可能性が35倍もあったのです。
これは幼少期の食習慣だけでは説明がつかず、兄弟の間で共有された長寿遺伝子が存在することを強く示唆します。