就寝・起床を1時間早めるだけで、うつ病リスクが23%減
これまでの研究では、睡眠時間の長短にかかわらず、夜更かしをする人は早起きをする人より、うつ病リスクが2倍高いことが示されています。
反対に、約3万2000人の看護士を対象とした研究(Current Biology, 2018)では、早起き型は4年間の調査期間で、うつ病の発症リスクが27%低いことが示されました。
しかし、この「早起き」とは具体的に何を指すのか。
睡眠時間をどの程度早めると、どのくらいの予防効果が得られるのか。
この点を明確にするため、研究チームは、DNA検査会社「23 and Me」と生物医学データベース「UK Biobank」を利用し、遺伝子に関連した因果関係を調べました。
遺伝子は睡眠に深く関係しており、これまでの研究で、340以上の遺伝子変異が、クロノタイプ(特定の時間に眠る傾向、いわゆる朝型・中間型・夜型などを反映する)に影響することが分かっています。
チームは、約84万人の遺伝子データをもとに、遺伝子変異が睡眠時間とどう関連するかを1時間単位で詳しく分析しました。
対象者のうち、3分の1が「朝型」、9%が「夜型」、残りが「中間型」でした。
全体の平均的な睡眠の中間点は午前3時で、これはつまり、午後11時に就寝し、午前6時に起床したことを意味します。
これらの情報をもとに、医療や処方記録と合わせて、クロノタイプとうつ病リスクがどう関係するのかを調べました。
その結果、睡眠の中間点(就寝と起床の中間点)を1時間早めるだけで、うつ病リスクが23%低下することが示されたのです。
例えば、いつもは午前1時に寝て、午前7時に起きる人が、午前0時に寝て、午前6時に起きるだけで、うつ病の発症率が23%減ります。
さらに、睡眠時間を1時間早めるごとに、リスク低下率が高まっていました。
先の例で言えば、就寝時間を午前0時から午後11時にすることで、さらに発症率は下がるということです。
一方で、研究主任のIyas Daghlas氏は「すでに早寝早起きの人に同じメリットがあるかどうかは分からない」と指摘。
「睡眠時間の前倒しは、中間型と夜型の人により効果的と見られる」と述べています。
では、就寝・起床を1時間早めることが、なぜうつ病のリスク低下につながるのでしょうか?