脳と精巣の共通点は「物質の放出プロセス」だった
次に研究チームは脳と精巣の共有タンパク質に注目し、そのほとんどが組織の発生や細胞のコミュニケーションに関与していると発見。
脳には、絶えず思考力を生み出すためにたくさんの神経細胞(ニューロン)があります。
同じように精巣には1日に数千万個の精子を生成すための生殖細胞があります。
どちらも高エネルギーを必要としますが、両方の器官にはそれぞれの細胞をサポートする特殊な細胞があり、これによって十分な栄養が供給されています。
またニューロンと精子には、「エキソサイトーシス(または開口分泌)」という共通のプロセスがあります。
これは細胞内部で作られた物質を外部環境に移動させるためのプロセスです。
例えば、脳細胞が互いに神経伝達物質をやり取りするときにエキソサイトーシスが起こります。
同じように、精子細胞が受精因子を放出するときにエキソサイトーシスが起こるのです。
さらにエキソサイトーシスは、その働きの一環として「物質のやり取りを助ける」働きがあります。
これにより、ニューロンの場合は細胞間の通信を可能にする神経突起の成長を助け、精子の場合は精子と卵子の融合を助けるのです。
つまり、脳と精巣は表面的には全く異なる機能をもっていますが、その役目を果たすために使用されるメカニズムはかなり似ていたのです。
当然、2つを構成するタンパク質の多くが共通していました。
とはいえ、脳と精巣の関係にはまだ多くの謎があります。
なぜ全く関係のないと思える2つが似ているのか、研究チームはさらに多くの研究が必要だと述べています。