傷跡が再生を妨げる
今回の研究で比較対象となったのは、再生能力が高いサンショウウオの「アホロートル(axolotl)」です。
アホロートルはメキシコサンショウウオなどの「幼形成熟」個体(体は幼形のまま生殖機能だけ成熟して繁殖可能になった個体)の総称で、日本では一般的に「ウーパールーパー」の名で知られています。
哺乳類の代表はマウスです。
哺乳類は体の一部を失ったり大きく損傷した場合、そこを再生する代わりに傷跡を形成します。
この傷跡は再生を妨げる物理的な障壁となります。
一方、アホロートルは体の一部を失う怪我をしても傷跡を形成しません。
怪我をしたときのこの体の反応の違いこそが、欠損した体を再生させる能力解明の重要な手がかりです。
今回の研究チームを率いたMDI生物学研究所のジェームズ・ゴドウィン(James Godwin)博士は、「瘢痕(はんこん:傷跡のこと)形成の問題を解決できれば、人間の潜在的な再生能力を引き出すことができるかもしれません」と語ります。
アホロートルは傷跡を残さないため再生が可能です。
1度傷痕ができてしまうと、再生という観点においてはゲームオーバーになってしまいます。
つまり、目指すべきは、人間の傷痕形成を防ぐことなのです。