研究のイメージ画像
研究のイメージ画像 / Credit:京都大学,ピアノ演奏を楽譜に書き起こす「耳コピAI」 -実用に近いレベルの楽譜生成に初めて成功-(2021)
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ピアノ演奏を楽譜にする「耳コピできるAI」が登場

2021.06.19 Saturday

現在インターネット上には膨大な数の音楽動画やファイルが溢れています。

気に入った曲に出会ったとき、自分で演奏してみたい、あるいは編曲したいと考える人も多いでしょう。

けれど、実際その曲の楽譜が手に入ることは稀です。なぜなら、世の中のほとんどの曲は楽譜になっていないからです。

京都大学の研究グループは、そんな楽譜化されていない音楽の問題を解決するべく実用に近いレベルで聞いた曲を楽譜にする「耳コピAI」の開発に成功したと報告しています。

難しい採譜を自動で行ってくれるAIの登場は、演奏を行う人々の支援から、音楽学研究や音楽教育への応用まで、幅広い活躍が期待できます。

研究の詳細は、3月13日付で、科学雑誌『Information Sciences』オンライン版に掲載されています。

 

ピアノ演奏を楽譜に書き起こす「耳コピAI」 -実用に近いレベルの楽譜生成に初めて成功-(京都大学) https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-06-15-1 音響から楽譜へのピアノ採譜 https://audio2score.github.io/index-ja.html
Non-Local Musical Statistics as Guides for Audio-to-Score Piano Transcription? https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0020025521002516

楽譜のない音楽たち

現代の多くの曲は、楽譜にされていない
現代の多くの曲は、楽譜にされていない / Credit:canva

世の中にはたくさんの音楽が溢れていますが、きちんと楽譜になっている曲というのは実のところあまり多くありません。

実際正確な楽譜を自分で書く作曲家というのは少数で、クラシックを除けば市販されている楽譜の多くは、別の人が「採譜」という作業を行って作っています

「採譜」というのは音楽を耳で聞いて楽譜に書き起こすことです。これは「耳コピ」という呼び方もされています。

ネットにあげられる音楽関連の動画でも、「耳コピ」という単語はよく目にします。

現代のポピュラー音楽などは、楽譜がなく演奏家が耳で聞いて再現しているパターンが非常に多いのです。

けれど、たとえばジャズのような奏者のアドリブやアレンジを主軸にした音楽には楽譜は存在していませんが、音楽教育や音楽研究の現場では、過去の優れた演奏の正確な楽譜は絶対に必要な道具です。

そんな大げさな状況でなくとも、気に入った曲に出遭ったとき演奏してみたい(だから楽譜が欲しい)と考えるのは、楽器が扱える人にとってごく当然の衝動でしょう。

曲を正しく演奏しようとする場合や、優れた音楽を分析し研究しようとする場合に、正確な楽譜は必須の存在なのです。

しかし、採譜は誰にでもできる作業ではありません。

複雑な音の並びを耳で聞いて楽譜にするためには、特殊な訓練が必要であり、音楽理論の正しい知識も必要になってきます。

ピアノの自動採譜は特に難しいとされる
ピアノの自動採譜は特に難しいとされる / Credit:pixabay

作曲家のメンデルスゾーンは、コンサートから帰ると、家人に「こんなだったよ」と1度聞いただけの曲を全部ピアノで演奏してみせたといいますが、そんな天才は普通いません。

採譜は非常に時間のかかる作業で、このため世の中の多くの曲は楽譜になっていないのです。

そのため、現代ではこの採譜をコンピュータによって自動で行う研究もされていますが、思うように進んでいないのが現状です。

特に、ピアノ演奏のように、複数の音が重なった和音を多用する音楽は、音高(ピッチ)とリズムの複雑な組み合わせを認識する必要があるため、自動化は長年の課題となっていました。

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