「海水並みの酸性度」でも生きられるオタマジャクシ?
日本のような温帯域の種とは違い、新熱帯区(Neotropic、中南米エリア)に住むカエルの多くは地面に卵を産みます。
しかし、孵化したオタマジャクシはエラ呼吸をするので、地上では生きられません。
そこで父親のカエルが子供たちをおんぶして、地面や樹木のくぼみにできた水たまりに運び、そこを保育所とします。
研究チームは今回、運搬習性を持つ7種のカエルを対象に、保育所となる水たまりの場所や化学成分を調べました。
2年間のフィールドワークで、100カ所以上の水たまりをサンプリング。
その結果、6種のカエルでは水たまりの位置が固定されていましたが、アイゾメヤドクガエルだけは地上0〜20メートル以上と、運搬範囲が非常に広かったのです。
こちらはその模式図。
1番のアイゾメヤドクガエルは範囲が広く、2〜7番のカエルは低・中・高のいずれかで固定しています。
さらに驚くべきは、アイゾメヤドクガエルの水たまりは、水素イオン濃度がpH3〜pH8と異常な幅を示したことです。
pH3とpH8では水素イオン濃度が約10万倍も違います。
言い換えるなら、本種のオタマジャクシは、オレンジジュースより少し強い酸性度から、海水と同レベルの酸性度まで耐えられるということです。
現にpH8の水たまりでも、健康に成長しているオタマジャクシが確認されています。
一方で、本種のオタマジャクシはカニバリズム習性を持つため、それぞれの水たまりに運搬される数は平均1〜2匹と低密度でした。
それでも、10匹以上のオタマジャクシが共存している水たまりもあり、親が同種喰いを避けるように運んでいるかどうかは定かでありません。
また、親の方に焦点を当てると、アイゾメヤドクガエルは高い運搬能力を持っていると言えます。
本種のオスは4センチほどで、地上20メートルは体長の500倍です。
私たちに置き換えると、165センチの人が子供を背負ったまま、825メートルの高層ビルに登るのと同じです。
それから、化学的および生理的な点からすると、オタマジャクシにとって「快適な」水たまりは樹木の高い位置にあったとのこと。
とすれば、な親ガエルがオタマジャクシを運ぶ高さには、なぜ0〜20メートルという幅があるのでしょう?
全員を樹上ではなく、地上の水たまりにも運搬している理由が分かりません。
単純にすべてのオタマジャクシを樹上に運ぶのが疲れるからでしょうか。
研究主任のクロエ・フイユー氏は「今後は、カエルの運搬に費やされるエネルギーや、水たまりの場所と化学成分がオタマジャクシにもたらす成長の違いを明らかにしなければならない」と述べています。