腸内細菌はマウスのストレスを癒していた
腸内細菌がないとなぜ社交性が失われるのか?
謎を探るために研究者たちはまず、腸内細菌を持たないマウスたちの血中成分を調べると共に、脳活動の尺度となる遺伝子(c-Fos)の発現量を調べました。
結果、腸内細菌が存在しないマウスの脳では、視床下部・偏桃体・海馬などストレス反応に関与する領域の活動が活性化していると判明します。
またこれらの領域が活性化するたびに、副腎から分泌されるストレスホルモン(コルチコステロン)の量が急上昇することが確認されました。
そこで研究者たちは試しに、腸内細菌を持たないマウスから副腎を取り除いてみました。
するとマウスの血中からコルチコステロンが消え去ると同時に、見知らぬマウスに対する社交性が大きく改善したのです。
結果に自信を得た研究者たちは次に、薬物でコルチコステロンを抑えてみました。
するとやはり、マウスは社交性を回復させました。
一方、脳に対する直接的なアプローチにも成果がありました。
研究者はまず、脳においてコルチコステロンの生産命令を出しているニューロンに特別に設計された受容体(スイッチ)を挿入しました。
このスイッチは特定の薬に反応することで、コルチコステロンの生産命令をオン・オフすることが可能です。
結果、腸内細菌を持たないマウスに対してコルチコステロンの生産命令をオフにするとマウスの社交性が回復した一方で、通常のマウスに対してこれをオンにすると、社交性が失われることが判明します。
どうやら腸内細菌のいないマウスでは常にコルチコステロンの生産命令がオンになっており、ストレス漬け状態にあるようです。
これでは社交性がもてなくても当然かもしれません。
研究者たちは、腸内細菌が何らかの方法で脳に作用して、コルチコステロンの生産命令を抑制していると結論しました。
しかしそうなると、どんな種類の腸内細菌が「ボッチ」に有効か気になります。
研究者たちはこの問いにも答えてくれました。