余命計算ツールは本当に必要なのか?
ブリュイエール研究所のエイミー・スー(Amy Hsu)博士は、このツールの意義を次のように語っています。
「このツールを使うことで、家族や愛する人たちは、別れのための計画を立てることができるようになります。
例えば、成人した子供が親のそばにいるために仕事を休む時期を計画したり、家族で過ごす最後の休暇をいつにするかを決めることができるのです」
確かに介護が常態化してくると、多くの家族はその人と最後に一緒に過ごす大切な時間を作るタイミングは見つけづらくなるかもしれません。
また、介護を受ける本人にとっても、ただいつ来るかわからない死を待つより、余命を知って準備をしておきたいという人もいるかもしれません。
医師の視点からも、余命がある程度判断できれば、治療法を切り替えるタイミングを決断するのに役立つでしょう。
ここには一定のニーズが存在しています。
しかし、人が余命を知ることには、大きなマイナス面や倫理的なジレンマも存在しています。
余命を知ることで、良くも悪くも本人の行動が変わることもあるでしょう。
また、このツールの計算が世界のどこでも通用するものであるかについては、まだ疑問があります。
誤った余命を宣告される事態は避けなければなりません。
カナダ、トロント大学の生命倫理学者(医学の発展から生じた倫理的問題を研究する分野)ケリー・ボウマン博士は次のように語ります。
「以前から指摘されていたことですが、特にパンデミックの発生によって、世界には人種や社会的地位、低所得者層などで、医療へのアクセス、医薬品の流通、医療を施すアルゴリズムに大きな偏りがあることがわかってきました。
こうした要因や倫理的な問題に万全の注意を払わずに、このようなツールを使うことは賢明ではありません」
現在、このオンラインツール「Risk Evaluation for Support」は、こちらで誰でも利用できるよう公開されています。
しかし、その利用には、まだ注意が必要かもしれません。