養殖場から逃げ出したニジマスの脳は15%も重くなっていた
動物が生存できるかは適応力と繁殖力にかかっています。
人間の場合、巨大な脳による高い適応力のお陰で、繁栄を極めています。
一方、虫の脳のサイズは極めて小さくなっていますが、高い繁殖力を生かして膨大な個体数を保持しています。
では、脳のサイズが虫以上、人間未満の魚においては、脳のサイズは生存能力にどのようにして貢献しているのでしょうか?
カナダのゲルフ大学の研究者たちは、謎を解き明かすために、魚の脳が環境の違いにどのように対処するかを調べることにしました。
最初の研究の対象となったのは、養殖場から逃げ出したニジマスです。
研究者たちは脱走から7カ月間、野生環境で過ごしたニジマスの脳と養殖場に留まっていたニジマスの脳を切り取って、重さを調べてみました。
結果、7カ月間の野生生活によって、元養殖ニジマスの脳は平均で15%も重量が増加していることが判明します。
また脳の部位ごとに大きさの違いを測定したところ、野生生活を送っていたニジマスは、特に「大脳(終脳)」の顕著なサイズアップがみられました。
安全な水槽で定期的にエサが与えられる養殖環境とは違って、野生環境では自分でエサを探し、危険を回避する必要があります。
研究者たちは、厳しい野生環境が魚の脳にフル回転を促し、脳の重量増加を促したと考えました。
どうやら魚にとって脳容積は絶対的なものではなく、必要なければ節約する対象なようです。
一方、別の研究チームは自然界にはありえない養殖場との比較ではなく、あくまで野生環境における魚の脳の大きさ変動を調査しました。