魚は季節によっても脳の大きさを自己調節できる
養殖場と野生環境での脳の大きさ比較は確かに興味深いものです。
しかし、人工的な環境との比較は魚本来の脳の調節機能100%反映するものではありません。
そこで同じくカナダのトロント大学の研究者たちは、野生環境に生息するレイクトラウト(イワナの一種)の、季節ごとの脳の大きさを調べてみることにしました。
結果、冬と秋に脳の相対的な大きさが増加し、夏と春には減少することが示されました。
脳の領域別の変化を調べたところ、やはり大脳のサイズが脳全体のサイズ変化に最も強く連動していました。
また脳の全体的な構造においては、脳表面のニューロンの細胞体が多く含まれる灰白質の増加が最も著しかったとのこと。
レイクトラウトは夏や春には湖の深い場所に潜む一方で、冬や秋になると岸辺に近い浅瀬で暮らすことが知られています。
研究者たちは、岸辺や浅瀬は湖底に比べて変化の多い複雑な環境であるため、脳の使用を促し、サイズアップにつながったと結論しました。
興味深いことに、魚の水平方向の移動速度を調べたところ、脳の大きさと移動速度の間に相関関係が確認されました。
なお同様の結果は、マンボウを対象にした別の研究でも示されています。
海岸線付近にすむマンボウの脳は遠洋にいるマンボウよりも平均して8.3%大きかったのです。
また最近の研究では「水場を探して陸地を2カ月間さまよう魚(マングローブ・キリフィッシュ)」は、陸上にいる2カ月間で脳を最大で46%も巨大化させることが示されました。
どうやら魚にとって未知の環境である陸地との接点は、魚の脳に激しいエクササイズを促すようです。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/91420
しかしそうなると、気になってくるのが脳をボリュームアップさせる仕組みです。