ゲーマーの方が自然について多くを学んでいるかもしれない
部屋にこもって遊ぶゲームは、アウトドアや自然を学ぶという行為とまるで正反対のように思えます。
しかし、そんな印象とは裏腹に、実際はゲーマーのほうが深く自然について学んでいる可能性が、今回の研究では示されました。
研究の共同執筆者であるマシュー・シルク(Matthew Silk)博士は、こうしたゲームのプレイヤーは自然環境保護に対する意識さえ持つようになる可能性があると話します。
「このゲームには、現在ではかなり希少になってしまった種がいくつか登場します。
すでに絶滅しているカロライナインコはその1つです。カロライナインコの絶滅には、狩猟が関与しています。
ゲーム内ではプレイヤーがこの種を撃った場合、絶滅の危機に瀕していることが警告されます。
これを無視してプレイヤーが狩り続けると、この種は本当にゲーム内で絶滅してしまうのです」
RDR2の中では、プレイヤーの行動が環境に与える影響も強調して描かれているのです。
重要なのは、特にこのゲームが自然や野生動物についてプレイヤーに学ばせることを目的にはしていないということです。
クリエイターは、ただリアルな表現でゲームへの没入感を高め、繊細に世界を体験させることを目指しただけです。
しかし、プレイヤーはその表現に魅了されて、遊んでいるうちに意図せず自然に詳しくなっています。
トゥルーロ大学のネッド・クロウリー(Ned Crowley)氏は、その重要性について次のように語っています。
「教育者や自然保護活動家は、大作ゲームに使われている技術から学ぶことが多くあるでしょう。
例えば、没入感を持たせたり、一つ一つの行動がゲームの進行に意味を持たせていることで、人々は何の努力もせずに動物について多くを学んでいるのです」
ただ、こうした極端な作り込みが今後のゲームで常に実装できるのかというと、疑問が残ります。
RDR2のような膨大なデータをもったオープンワールドゲームは、ゲーム開発を圧迫する要因になっていて、ゲームの開発コストや制作時間を高騰させ続けています。
変な作り込みにこだわるより、ゲーム部分の面白さに注力してもっとコンスタントに作品を発表してもらいたいと考えるゲーマーも多いでしょう。
開発者も、よほどの信念とリソースの余裕がない限り、細部まで作り込んだゲーム制作は難しいはずです。
RDR2は凄まじい作り込みのゲームですが、ひょっとすると後の世では「なぜそこまで作り込めたのか?」とオーパーツのように扱われる作品になってしまうかもしれません。
けれど、ゲームが新しい学びの機会になるというのは、なにもRDR2のような作り込みだけに限った話ではないでしょう。
桃鉄で地理を学んだり、信長の野望で日本史を覚えたり、艦これやアズレンで近代史に詳しくなったという人は多いのではないでしょうか。
最近は競走馬に詳しくなってしまった人も多いでしょう。
たとえ表現が現実と異なっていても、ゲームが教育に役立っているという視点は、もっと着目されるべきことなのかもしれません。
そして、まだRDR2をプレイしたことがないという人は、ぜひその細部まで作り込まれた世界を体験して、ゲームで学んだ知識にアメリカの野生動物を加えてみてください。