勝利の記憶が睡眠中に記憶力を向上させると判明!
古くから、一晩寝ることがさまざまなスキルや学問研究に重要なことが知られていました。
この不思議な現象は現代の脳科学においても主要な課題であり、研究によって、いくつか有用な事実も明らかになってきました。
例えば最新の研究では、ピアノなどのスキルの上達は練習中に起こらず、休憩中に起こることが示されました。
休憩中の脳内では練習内容が、練習中の20倍もの超高速度で連続再生されており、脳への記憶の統合を促し、上達の源となっていたのです。
では練習中や学習中の「感情」は関係ないのでしょうか?
ジュネーブ大学の研究者たちは「関係ある」と仮説をたてました。
ふてくされて寝るより、満足して寝るほうが、同じ睡眠でも記憶にいい影響を与えるだろうと考えたからです。
問題は、いかにして仮説を証明するかでした。
そこで研究者たちは、脳波測定(EEG)とMRI、そしてAIによる機械学習を組み合わせ、特定の学習内容が発する特徴的な脳活動を検出できる装置を開発しました。
この装置があれば、脳の中でしか見えない「学習内容」を、リアルタイムで追跡することが可能になります。
一方、学習内容には簡単な2つのゲームが選ばれました。
1つめのゲームは、手掛かりをもとにターゲットの顔を候補の中から発見する「顔当てゲーム」。
2つめのゲームは、3D迷路を攻略する「迷路ゲーム」でした。
そしてボランティアの被験者たちに2つのゲームを挑戦してもらいながら脳の様子を開発された装置で観測します。
ただし、ゲームはインチキでした。
被験者の感情を操るために、どちらか片方は絶対にクリアできないようにして被験者たちに「敗北の記憶」というネガティブな感情を感じてもらいました。
もう一方のゲームにはそのようなインチキはされていないため、被験者たちは高確率で「勝利の記憶」と共に、ポジティブな感情を得ることができます。
起きている間のゲームが終わると、次はいよいよ睡眠中の脳の観察です。
被験者たちの睡眠中の脳は、負けたゲームの内容と勝ったゲームの内容を、どのように処理していたのでしょうか?