深い睡眠中に脳は「勝った記憶」を集中的に反芻(はんすう)する
睡眠中の被験者たちの脳では何が起きていたのか?
被験者たちが眠りにつくとすぐに、変化が現れ始めました。
眠った直後から、被験者たちの脳は、起きている間に経験したゲームと同じ活動パターンをみせはじめます。
脳が起きている間に学習した内容を再生し、記憶の定着と統合を行っている証拠です。
これは「脳は眠りにつくと同時に記憶の再活性化を行い、起きている間に得た情報を整理・統合し始める」という既存の説を裏付ける結果です。
しかし、眠りが深くなるにつれて様子が変わってきました。
脳の活動パターンが「勝利の記憶」を持つゲームをしていた時と、同じパターンだけを繰り返すようになっていったのです。
この結果が示すのは、深い眠りにある脳がポジティブな感情を得たゲーム内容を独占的に追体験しているということ。
また興味深いことに「勝利の記憶」を持つゲームが追体験されている時には、ヒトの長期記憶に関連している海馬と、快楽の回路(報酬系)の一部として知られる腹側被蓋野(VTA)が同時に活性化していました。
ここから「勝利の記憶」を持つゲーム内容が長期記憶に収められるとともに、快楽を発生させ、さらなる反芻(はんすう)を促していることも分かります。
そして反芻が繰り返されるほど記憶の定着は強固になっていきます。
その証拠に、研究者たちが被験者に対して、実験の2日後にゲーム内容を問う記憶テストを行った結果、睡眠中に繰り返し反芻されていた「勝利の記憶」を持つゲームのほうが、高い成績になりました。