元素変換のデメリット
元素を構成するような、原子より小さい粒子は「亜原子粒子」と呼ばれます。
原子核を構成している亜原子粒子は、物理学が定義する4つの力において最強の力である「強い核力」によって拘束されています。
これをバラそうとした場合、途方もないエネルギーが必要になってきます。
理論的には元素を他の元素へ変える方法わかっていても、原子核から陽子を取り除いたり、あるいは新たに付け加えるというのは非常に困難な行為なのです。
しかし、そうはいってもまったく不可能なわけではありません。
現代の科学においては、その困難な行為を達成しています。
たとえば、日本が合成に成功した非常に重い元素である原子番号113「ニホニウム」は、原子番号30の亜鉛と原子番号83のビスマスの原子核を衝突させ融合することで作り出されています。
この図からもわかるように、大きい原子は非常に不安定になります。
そのため重い原子は、陽子と中性子(アルファ線)、電子(ベータ線)、電磁放射(ガンマ線)を放射して余分な重量を減らしていきます。
こうした物質を放射性元素と呼びます。
周期表のビスマスより重い元素は、ほとんど放射性元素です。
重い元素は崩壊して小さくなっていくなら、いずれ金もできるんじゃないか? と思ってしまいますが、残念ながらこれはあまり金を作り出す良い方法ではありません。
第1に、放射性崩壊は非常に時間がかかる反応で、例えばラジウム226は、元素の半分が崩壊するまでに1600年もかかります。
第2に、放射性物質は人体に非常に有害です。
第3に、ウラン、トリウム、ラジウムなど重い元素は最終的に崩壊して鉛に変わったところで安定してしまいます。
つまりそれより原子番号の低い金までたどり着かないわけです。
たった3つ陽子が違うだけなのに、金で崩壊が終了しないのは悲しい事実です。