現生種の倍以上ある口吻
ゾウムシは、今から約1億5000万年前のジュラ紀に長い口吻を進化させ、近縁のハムシ上科から分岐しました。
今回の新種は、約1億年前の琥珀に見つかったので、比較的初期に誕生した種と見られます。
保存されていたのはオスの個体で、体長は5.5ミリ。その半分は頭部と口吻に占められています。
学名は、ギリシャ語で「湾曲したくちばし」を意味する「Rhamphophorus」と、ロシアの著名な昆虫学者アンドレイ・A・レガロフ氏の名前を取って、「Rhamphophorus legalovii」と命名されました。
本種は、11節に分かれた触覚を持つ原始的なゾウムシであり、研究チームはこれを「チョッキリモドキ科(Nemonychidae)」に分類しました。
本科のゾウムシは、ナンヨウスギ、マツ、イヌマキなど針葉樹の花粉を主食とし、温帯地域に生息します。
現存する種は3亜科からなり、新種はそのうちのCimberidinae亜科に属するとのこと。
同亜科には約70種のゾウムシがいますが、今回ほどの長い口吻を持つものは絶滅種も含め、前例がありません。
研究主任のジョージ・ポイナー博士は、新種の口吻について「メスをめぐるオス同士の争いの際に武器として使われたのではないか」と指摘。
また「足の形態から、植物の表面をつかむ能力や、ライバルのオスに接近する能力がかなり高かったでしょう。
それから今回の化石には、多少の傷跡が見られるため、樹脂にとらわれる前にオス同士で争っていた可能性がある」と説明します。
初期のゾウムシに、これほど奇抜な姿をした種がいたことは大変驚くべきことです。
ポイナー博士は「本種には、ほかのゾウムシに見られない特徴が数多くあるため、種の体系的な位置づけには数年の期間を要するでしょう」と述べています。
しかし、その後のゾウムシの進化を踏まえると、あまりに長すぎる口は不便だったのかもしれません。