ベジタリアンはうつ病にかかりやすい?
以前より、「肉食をやめるとメンタルの不調を生じやすくなる」ことが複数の研究で指摘されてきました。
一方で、菜食主義が実際にどれほどうつ病に関与しているかは分かっていません。専門家によっては、菜食主義の悪影響を否定する意見もあります。
そこで本研究では、一般的な食習慣とベジタリアンのうつ病スコアを比較した13の先行研究を対象に、大規模なメタ分析を行いました。
対象者は、計4万9889名(ベジタリアン8057名、非ベジタリアン4万1832名)です。
サンプル数は多いものの、対象者の地理的ばらつきは少なく、異文化間での考察には限界があります。
それでもすべての調査データを分析した結果、ベジタリアンは、非ベジタリアンに比べて、うつ病のスコアが有意に増加していることが明らかになりました。
ベジタリアンとうつ病の相関関係が明示された一方で、研究主任のセバスティアン・オクレンブルク氏は「なぜ菜食主義が、うつ病の発症を高めるのかははっきりしない」と述べています。
これまでの研究によれば、ベジタリアンは、赤肉に含まれるビタミンB群の摂取量が極端に不足し、それがメンタルの不調につながると指摘されてきました。
たとえば、ビタミンB1の欠乏は、精神の不安定や集中力の低下、頻繁な眠気を招きますし、鉄分の欠乏は、貧血や息切れ、疲労感を強めます。
また、精神障害を抱える患者に共通して見られるのが、肉に含まれるビタミンB12と魚に含まれるオメガ3脂肪酸の不足です。
こうした栄養素を欠くと、感情をコントロールするための脳内ホルモンである「セロトニン」が生成されなくなるため、うつ病を発症しやすくなると言われます。
しかし、オクレンブルク氏は「この相関関係だけで、結論を出すことはできない」と言います。
実際、菜食主義がうつ病を発症させるメカニズムは分かっていませんし、ベジタリアンが必ず精神不調をきたすとも限りません。
たとえば、今回の分析対象となったある研究では、「うつ病患者がベジタリアンになったのは、症状を発症した後であるケースが多い」と指摘されています。
うつ病になったことで健康志向が高まり、肉食をやめたとか、あるいは動物への愛護の気持ちが高まったなどの理由も考えられます。
それでも、オクレンブルク氏は「この相関関係が明らかになった以上、菜食主義とうつ病の関係を化学的に調べる必要がある」と話します。
いずれにせよ、肉や魚、野菜をバランスよく食べるのが一番たいせつなことでしょう。