翅の喪失が生む「新たな危機」とは
新たな危機とはズバリ、「種の絶滅」です。
今回の研究では、昆虫がいかにすばやく環境の変化に適応できるかが示されましたが、一方で、翅の喪失は移動力の低下を意味します。
広い範囲で移動ができないとなると、昆虫はひと所にとどまるしかありません。
すると、彼らは近くにいる仲間同士で交配するので、遺伝的な多様性が乏しくなり、種として脆弱になるのです。
遺伝的に多様であるほど、その中でウイルスや病原菌に耐えられるグループが出てくる確率が上がります。
反対に、遺伝的バリエーションに乏しいと、同じウイルスで種全体が全滅しかねないのです。
人間の進出により、世界中の生態系のバランスが多分に変化していますが、森林破壊のような急激な変化に対して、野生生物がどのように適応し、進化していくのかは、まだほとんど分かっていません。
本研究は、その大きな一歩となります。
知らぬ間に生物を絶滅させないためにも、人類は自らの活動が自然に与える影響を理解しなければなりません。