ストラディヴァリス『レディ・ブラント』
ストラディヴァリス『レディ・ブラント』 / Credit:Tarisio Auctions(Wikipedia)_ストラディバリウス
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名楽器ストラディバリウスの独特な音色は「防虫剤」のおかげだった

2021.08.29 Sunday

ヴァイオリンの名器ストラディバリウスは、製作から300年以上経過した現在でも、その音色を再現できていません。

アメリカ・テキサスA&M大学(Texas A&M University)に所属する生化学者ジョセフ・ナジヴァリー氏、国立台湾大学(National Taiwan University)化学科に所属するワンチン・タイ氏ら研究チームは、ストラディバリウスの音色の秘密が木材に施された化学処理にあったと発表し、その種類を特定しました

特殊な化学物質を染み込ませることで、保存と音響の両方に影響を与えていたのです。

研究の詳細は。6月1日付の科学誌『Angewandte Chemie』に掲載されました。

The secret of the Stradivari violin confirmed https://phys.org/news/2021-08-secret-stradivari-violin.html The World’s Most Famous Violins Were Treated With a Secret Chemical Mix, Study Shows https://www.sciencealert.com/classic-violins-get-their-amazing-sounds-from-chemical-treatments-study-shows
Materials Engineering of Violin Soundboards by Stradivari and Guarneri https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202105252

ストラディバリウスの独特な音色は化学薬品から来ていた

「ストラディバリウス」は、「ストラディバリの作品」という意味で、17世紀~18世紀の楽器職人アントニオ・ストラディバリとその息子たちが製作した弦楽器の名前です。

この楽器は、非常に良い音を出すことで有名で、現代でもその音色は再現することができず、何百年も昔の楽器が未だに1千万円以上の値で取引されています。

「グァルネリ」という、アマティのもとでストラディバリの兄弟子だった職人の楽器も、美しい音を響かせることで有名で、ストラディバリウスと同様に高値で取引されています。

これらの楽器の音色の秘密は、未だにわかっておらず多くの研究が続けられています。

約40年前ナジヴァリー氏は、ストラディバリウスグァルネリの独特の音色が、職人の技術だけでなく、当時防虫剤として利用されていた化学薬品からもたらされていると提唱しました。

そして今回の新しい研究では、それらヴァイオリンに用いられた薬品の種類を特定することに成功しています。

チームは、分光法(光や放射線を利用して物質を調べる方法)、顕微鏡分析、化学的手法を組み合わせてストラディバリウスを分析。

その結果、ホウ砂硫酸亜鉛硫酸銅ミョウバン、塩、石灰水などが処理剤として利用されていたと判明しました。

チームはこれらが使用された目的が、木材の保存とヴァイオリンの音響調整にあったと考えています。

実際、ホウ砂は古代エジプトでミイラ化の際に使用され、後には防虫剤としても利用されたとのこと。

またナジヴァリー氏は、この化学処理について次のように解説しています。

「これらの化学物質の存在は、ヴァイオリン製作者と地元の薬剤師の協力関係を示すものです」

「当時は虫が蔓延していたので、製作者のストラディバリもグァルネリも、木が虫に食われるのを防ぎたかったのでしょう」

次ページストラディバリウスに施された特殊処理の一端が明らかになる

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