ストラディバリウスの独特な音色は化学薬品から来ていた
「ストラディバリウス」は、「ストラディバリの作品」という意味で、17世紀~18世紀の楽器職人アントニオ・ストラディバリとその息子たちが製作した弦楽器の名前です。
この楽器は、非常に良い音を出すことで有名で、現代でもその音色は再現することができず、何百年も昔の楽器が未だに1千万円以上の値で取引されています。
「グァルネリ」という、アマティのもとでストラディバリの兄弟子だった職人の楽器も、美しい音を響かせることで有名で、ストラディバリウスと同様に高値で取引されています。
これらの楽器の音色の秘密は、未だにわかっておらず多くの研究が続けられています。
約40年前ナジヴァリー氏は、ストラディバリウスやグァルネリの独特の音色が、職人の技術だけでなく、当時防虫剤として利用されていた化学薬品からもたらされていると提唱しました。
そして今回の新しい研究では、それらヴァイオリンに用いられた薬品の種類を特定することに成功しています。
チームは、分光法(光や放射線を利用して物質を調べる方法)、顕微鏡分析、化学的手法を組み合わせてストラディバリウスを分析。
その結果、ホウ砂、硫酸亜鉛、硫酸銅、ミョウバン、塩、石灰水などが処理剤として利用されていたと判明しました。
チームはこれらが使用された目的が、木材の保存とヴァイオリンの音響調整にあったと考えています。
実際、ホウ砂は古代エジプトでミイラ化の際に使用され、後には防虫剤としても利用されたとのこと。
またナジヴァリー氏は、この化学処理について次のように解説しています。
「これらの化学物質の存在は、ヴァイオリン製作者と地元の薬剤師の協力関係を示すものです」
「当時は虫が蔓延していたので、製作者のストラディバリもグァルネリも、木が虫に食われるのを防ぎたかったのでしょう」