未来の安定した美味しいお肉の供給
日本では人口減少が問題にされていますが、世界全体で見た場合、人類の人口は増加傾向にあります。
世界人口は2050年には97億に達すると予想されています。
また、これまで貧しかった国も発展していけば食生活が向上していきます。
こうなると世界規模で、食用肉の消費が増加し、タンパク質需要の急増に対して供給が追いつかないというタンパク質危機(プロテインクライシス)が起きる懸念があります。
食用肉の生産には、家畜の飼育が必要ですが、これには大量の穀物や水の消費、広大な放牧地確保のための森林伐採、また家畜が出す糞尿やゲップによるメタンガスの増加(メタンガスはオゾン層破壊にもつながる)、という環境問題がつきまといます。
地球温暖化にともなう気候変動の進行を考えると、食肉が今後の世界で安定的に供給できるかは、かなり不安なところです。
そこで注目されているのが、培養肉です。
培養肉は、動物から取り出した少量の細胞を培養に寄って人工的に増やして作った肉です。
これは2013年ころから本格的に研究が進められていて、現在は実用化に向けたペンチャー企業が世界中で設立されています。
しかし、研究で報告されている培養肉はほとんどが筋繊維(赤身)のみで構築されるミンチ様の肉であり、複雑な組織構造をもった例えば霜降り和牛のような肉は、再現できていません。
食は人の心の豊かさにもつながる重要なものです。
未来の食事が培養肉に依存することになるなら、胃袋だけでなく舌や目も満足させる培養肉を生み出せなければならないでしょう。
そこで今回の研究チームが挑戦したのが、和牛の霜降りを再現するということだったのです。