代用塩で年間50万人の早期死亡が防げる
代用塩は、食塩に含まれるナトリウム量を減らし、代わりに塩化カリウムを加えたものです。
これにより、ナトリウムの摂取量を大幅に制限し、高血圧を防ぐことができると言われています。
代用塩は、健康面で期待されているにもかかわらず、脳卒中や心臓病、死亡率への影響を調べる大規模な臨床試験が行われておらず、その効果についても疑問が残されていました。
そこで研究チームは、中国の農村部に住む2万人以上の村民を対象に、脳卒中の既往歴や血圧の低下がある参加者を募って調査を実施。
被験者は合計600の村から来ており、実験開始時の平均年齢は約65歳でした。
実験では、被験者を半分ずつに分け、片方のグループに代用塩を無料で配布し、約5年間の試験期間中に使用してもらいました。代わりに普段使っている食塩は控えるか、使用量を制限してもらいます。
一方で、残りの半数の村民を対照群とし、これまで通り、食塩を使用してもらいました。
その結果、2つのグループに顕著な違いが見られたのです。
調査終了時には、被験者のうち約4000人が亡くなっており、存命の人でも3000人以上が脳卒中、5000人以上が何らかの心血管疾患を発症していました。
これは悲しく不幸な結果ですが、実験開始時の年齢や健康状態を考えると、予想外のことではありません。
しかし、その内訳は、2つのグループで大きく違っていました。
代用塩を使用したグループは、通常の食塩を摂取し続けたグループに比べて、死亡率が有意に低かったのです。
具体的には、代用塩群の死亡率が、年間あたり1000人につき39.28件なのに対し、食塩群が44.61件でした。
また、脳卒中の発症率は、前者が29.14件、後者が33.65件で、心血管疾患は、前者が49.09件、後者が56.29件と、やはり代用塩群が低くなっていました。
今回の結果は、これまでも予想されていた代用塩の効果を裏付けるものです。
研究主任で、オーストラリア・George Institute for Global Healthの臨床疫学者、ブルース・ニール氏は「現代は、世界中のほとんどの人が必要以上の塩分を摂取している状況です。
もし世界規模で代用塩に切り替えれば、年間で推定46万人の早期死亡を防ぐことができるでしょう」と述べています。
研究チームは今後、国によって製造方法が異なる代用塩で、どのような健康面への違いが現れるかを調べる予定です。