キメラワクチンはmRNAのメガ盛りで効果を発揮する
現在、私たちが接種しているモデルナやファイザーのワクチンは、新型コロナウイルスに対抗する効果しかありません。
その理由はワクチンに含まれるmRNAが、新型コロナウイルスに対応するものだけだからです。
ならばと、研究者たちは1本のワクチンに様々なウイルスのmRNAを詰め込む方法を考案しました。
新たに開発されたワクチンは、新型コロナウイルスに加えて、2003年に猛威をふるった「SARS」、コウモリのコロナウイルス(BT-CoVs)、カメのコロナウイルス(SHC014)など、複数のコロナウイルスのmRNAを元に組み立てられました。
もしこれら追加投入されたmRNAが、ファイザーやモデルナのワクチンと同じような効果を持っていれば、1つのワクチンで、複数のウイルスに効果がある極めて汎用性の高いワクチン(キメラワクチン)ができるはずです。
そして、このキメラワクチンを接種していれば、危険なウイルスどうしの融合が起きても、生き残ることが可能になるかもしれません。
研究者たちは早速、キメラワクチンをマウスに投与し、実際にウイルスに感染させて効果があるかを調べました。
その効果、キメラワクチンを注射されたマウスは複数種類のコロナウイルスに対して免疫能力を同時に得て、肺炎の発症を防ぐことに成功したのです。
さらにキメラワクチンには、ワクチンの効果が低いとされている南アフリカの変異株(B.1.351)やイギリスで発見された変異株(B.1.1.7)にも高い効果があることが示されました。
この結果は、複数のウイルスのmRNA(遺伝物質)を組み込まれたキメラワクチンが、未来のパンデミックに対して非常に有効であることを示します。
さらに興味深いことに、カメのコロナウイルスを元に作り出したmRNAには、他のコロナウイルスの広く、中程度の効果があることが判明します。
多種多様なmRNAを含むキメラワクチンを開発したことで、コロナウイルス全体の、思いもよらない弱点が発見されたのかもしれません。