「ミジンコの死んだふり」は水の流れを抑えて天敵から「隠れる」のに役立っていた
実は「死んだふり」をする動物は多く、天敵から身を守る行動の1つだと考えられています。
この行動パターンは水中の微小動物にも共通するようです。
全国の沼地や水草などで見られる円形の小型ミジンコ「マルミジンコ」も、天敵に襲われると動きを止めて死んだふりをします。
しかしこの死んだふりがどれほど有効かは不明のままでした。
そこで研究チームは、ミジンコの天敵であるトンボの幼虫「ヤゴ」を使って、マルミジンコが行う死んだふりの生存率を調査することにしました。
最初の実験でミジンコの動きを麻酔で止めたところ、ヤゴはミジンコを襲わなくなりました。
つまりヤゴはミジンコが遊泳する際の微細な水の流れを察知しているのです。
次いで、ヤゴ1匹に対して5~25匹のミジンコを容器に入れ、両者の行動を観察。
この観察実験は計60回行われました。
そしてヤゴによる最初の攻撃(不意打ち)を生き残ったミジンコが、「そのまま泳いで逃げる場合」と「死んだふりをする場合」で、どちらが効果的か観察できました。
結果は次のとおりです。
そのまま泳いで逃げた場合
- 逃げた個体数:59個体
- 捕食された個体数:13個体
- 逃走失敗率:22%
死んだふりをした場合
- 死んだふりをした個体数:94個体
- 捕食された個体数:4個体
- 逃走失敗率:4%
つまりミジンコは、死んだふりをすることで生存率を5倍も上げていたのです。
実験でミジンコが死んだふりをすると、ヤゴは気がそれるか興味を失っていました。
そしてミジンコたちは、その隙をついて逃げることに成功(動画の30秒あたり)していました。
この結果から、マルミジンコ以外の水生生物も死んだふりによって水の流れを抑え、生存率を上げていると考えられます。
水中では視覚以外にも水の流れが大きく影響するため、動きを止める「死んだふり」が特に有効だったのですね。