「尿素」を加えることで、強度が300%上昇
その方法は、汗や涙、尿として排出される老廃物である「尿素」を取り入れることです。
これをアストロクリートの生成段階に組み込むことで、圧縮強度が300%以上向上することが分かりました。
これにより、通常のコンクリートを大幅に上回る40MPaの強度が得られています。
研究チームのアレド・ロバーツ氏は「この新技術は、月や火星で提案されている他の多くの建設技術に比べて、多くの利点がある」と指摘。
その上で「科学者たちは、地球外でコンクリートのような建設材料を作る技術を模索してきましたが、まさかその答えが私たちの体内にあろうとは思ってもいませんでした」と続けています。
チームの計算では、宇宙飛行士6人が火星で2年間のミッションを行う間に、500キロ以上のアストロクリートが製造できると算出されています。
その量は有人ミッションを重ねるごとに増え続け、材料の輸送費や建設コストの大幅なカットが期待できるでしょう。
ただし、懸念される問題もあります。
それは、血液や尿素の採取に伴う宇宙飛行士への肉体的、精神的な悪影響です。
ロバーツ氏は、このように述べています。
「地球外の微小重力がすでに体へ大きな負担をかけており、筋力の低下や骨の変性などの問題を引き起こしています。
その上で、血液や尿素を採取することが健康を損なう恐れもあります。
火星の重力は地球の約38%とされ、宇宙空間よりは強いですが、血液や尿素の採取が安全に行えるかどうかは不明です。
また、食事面についても、HSAの抽出によって生じる不足分を補うために、タンパク質やカロリー、水を摂取しなければなりません。
いずれにしても、このプロジェクトを実行に移すには、乗り越えるべき壁がまだまだあります」
こうした問題を克服するにも、研究者の血と汗と涙の努力が必要となるでしょう。