血中タンパク質とレゴリスで「コンクリート」が作れる
月面や火星でのコロニー建設には、地球からの材料調達が難しいため、現地で入手できる資源を有効活用しなければなりません。
こうした「あり合わせの資源」を使う技術を「in-situ resource utilization(ISRU)」と呼びます。
基本的には、月面や火星上で採取できるレゴリスや岩石、および水の堆積物が中心となります。
しかし、見落とされている重要な資源があります。
それが、宇宙飛行士です。
もっと具体的に言えば、宇宙飛行士が現地で排出する血と汗と涙、そして尿です。
研究チームは今回、人の血液中ぶ存在するタンパク質の「ヒト血清アルブミン(HSA)」が、模擬ダスト(月や火星で採取できるレゴリスに近いもの)を結合して固めるバインダーとして機能することを発見しました。
HSAは、献血と同じ手順で、宇宙飛行士から安全に抽出できます。血漿中に最も多く含まれるタンパク質でもあり、1日あたり12〜25gの割合で補充されます。
HSAと模擬ダストを組み合わせた結果、25MPa(メガパスカル)という高い圧縮強度をもつコンクリートの生成に成功しました。
これは通常のコンクリートの20〜32MPaとほぼ同じ強度です。
この新たな素材は、宇宙飛行士とコンクリートの融合したものとして、「アストロクリート(AstroCrete)」と命名されました。
さらにチームは、アストロクリートの強度を格段に高める方法も発見しています。