硝酸アンモニウムは爆発する
硝酸アンモニウムは前述したように、肥料としても用いられていますが、実はもう一つ重要な用途が存在します。
その用途とは、爆薬です。
硝酸アンモニウムは北米で使用される爆発物の80%を占める産業用爆薬であるほか、テロリストなどが用いる即席爆薬(IED)の原料でもあります。
また硝酸アンモニウムは過去に何度も巨大な爆発事故を引き起こしていることも知られています。
1946年にテキサス州で起きた爆発事故では、保存していた硝酸アンモニウムが何らかの原因で引火し、周囲1.6kmを「サラ地」に変えてしまいました。
また2020年ではレバノンの首都ベイルートで保管中だった硝酸アンモニウムが爆発し、幅124m・深さ43mのクレーターを形成、さらに爆風波はレバノン全域の家を破壊し、30万人が住む場所を失いました。
さらに硝酸アンモニウムは特定の条件で、水に溶けた状態でも爆発を起こすことが知られています。
このように、硝酸アンモニウムには、少しばかり厄介な性質があるのです。
しかしそれでも、電気を使用せず、水と日光だけで永久に稼働する冷却システムは、電気のインフラが存在しない多くの地域の人々を、致命的な熱波から救う手段になりえます。
研究者たちは今後、より大規模な冷却システムを開発するため、効果的な硝酸アンモニウムの析出法を探っていくとのこと。
私たちが使用している瞬間冷却材が安全なように、析出した硝酸アンモニウムに対する適切な対策ができれば、世界中の人々に冷房を届けることができるでしょう。