温度感覚の性差は「進化の過程」で生まれた?
レヴィン氏と研究チームは、私たちにも当てはまると考えており、「人間にも同じ進化上の圧力が適用され、それによって男女間に余裕が生まれている」と主張します。
共著者のタリ・マゴリー・コーエン氏は「人における温度選好は、男女が互いに少し距離を置くことで、各人が平和と静けさを楽しめるようにするためのもの」と述べています。
これまでの研究で、基礎代謝率(安静時に体内で燃焼されるエネルギー量)は、女性の方が男性よりも23%低いことが分かっています。
代謝率が低いということは、生成される熱量が少ないということです。
また、男性は熱を発生させるのに適した筋肉を多く持っている一方で、女性はエストロゲン(女性らしさを作るホルモン)によって熱が放散されたり、手足の血流が悪くなることで、男性に比べて体温が低くなる傾向にあります。
確かに、家庭内のクーラーや暖房の温度設定で、カップルや夫婦間の意見が食い違うことは多々あるでしょう。
しかし、このような温度感覚の生理的な違いは、何らかの進化的な力によって促されたのでしょうか?
「おそらくそうだ」とレヴィン氏は話します。
たとえば、人類が最初に登場したのは気温の高いアフリカのサバンナであり、いかに涼しく過ごすかが重要でした。
男性は屋外で狩猟や採集のために活動し、女性は屋内で家事や子どもの世話をしていたはずです。
より活動的で、筋肉量も多い男性は、体温が高くなりすぎないようにする策が必要でした。
それが「発汗」です。
もちろん、女性も発汗はしますが、一般に男性の方が汗っかきになりやすい傾向にあります。
こうした温度感覚の違いは、男女間の役割分担が生んだ産物なのかもしれません。