ヒトの脳オルガノイドから「知恵の実遺伝子」を削ると脳サイズが退化した
反復配列に過ぎないものが本当に「知恵の実遺伝子」なのか?
答えを得るために研究者たちはヒトの人工培養脳(脳オルガノイド)の遺伝子を操作して、ZNF558から生産される転写因子を削除してみました。
すると、脳細胞内部のミトコンドリア数が減少すると同時に、培養初期の時点において、脳オルガノイドのサイズが小さくなっていることが判明します。
ヒト遺伝子にあった「知恵の実遺伝子」の働きを無効化した結果、ある種の「退化」が発生し、ヒトとしての脳サイズを維持できなくなったためであると考えられます。
また興味深いことにZNF558の削除は、脳オルガノイドの早熟を促すことが判明します。
ヒトの高い知能はより長い未熟な脳の状態を維持することで獲得されたという「ネオテニー(幼年期の延長)」説が正しいとするならば、早熟化もまた、脳のサイズ縮小と共に退化の1つの側面なのかもしれません。